2010年12月17日

終わりは始まり。

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俺様、とうとう父親になってしまった!子どもの名前…ここでは「ポルトちゃん」ということにしておこう。ちっちゃなちっちゃな女の子だ。元気な子を産んでくれたヨメさんのボニータには、本当に感謝している。
 俺様、これまで病院に行くといったら、かなり重篤な状態の人の見舞いや付き添いばかりだった。病院に寝泊まりして付き添った人は、みんな亡くなったし。でも今回、生まれて初めて命が誕生する場面に立ち会わせてもらい、いたく感激した。と同時に、お産があんなに大変なものだとは思わなかった。男の俺様からしたら、「ヨメさんがお腹痛いって言い出して、病院に一緒に行く」→「分娩室の外で待つ」→「オギャアという声が聞こえる」→「分娩室に入ると赤ちゃんが生まれていて初対面。『元気な女の子ですよ〜』と言われる」…そんなもんだろうと考えていた。とんでもない!陣痛らしきものが始まったので病院に行ったら「まだ早い!」と追い返されること2回。ようやく入院させてもらってからはボニータの母親のサッキーとともに、痛がるボニータの腰とかをマッサージ。個室から分娩控え室に移動する頃になると、もはやボニータはまともにしゃべれない状態。ずっと痛そうな声を出し続けていた。俺様、イスラエルとか鹿児島で何度か牛の出産を目にしてきた。牛って、出産前になると鳴き声が変わる。それを聞きつけて「あ、生まれるな」と見に行くのだが、人間もそれに近い。陣痛の痛みによるうめき声もだんだん変わっていくのだ!さらに、マッサージをしていると骨盤が広がっていったりするのがわかり、出産のためのトランスフォームがどんどん進んでいく。人体、生き物の体って本当にスゴイ!! やがて、赤ちゃんの袋が見えてきたので、いよいよ分娩室へ。俺様は、ボニータがいきみやすいように頭を支えたり、手を握ったり、声をかけたりするだけの役。もはやボニータの頑張りに懸けるしかない。すると、分娩室に入ってわずか15分…「オギャア!」という声とともに赤黒い赤ちゃんが出てきたのだ!分娩室に入った時間をお産というなら15分の安産と言えるけど、陣痛らしきものが始まってから数えたら24時間以上。しゃべれないほどの痛みを伴う陣痛から数えて9時間ぐらい。ボニータは陣痛の後期で3回も落ちかけていた。そりゃ当然だわな。36時間不眠だった俺様でさえも、結構しんどかったぐらいだから。お産はホンマにすごい体力を使うと思う。
 さて、俺様、ボニータに陣痛が訪れたあたりから、とても複雑な気分だった。なんて言うのかなぁ…一種の寂しさのような、そうでないような…。多くの夫婦は妊娠がわかってから、お腹の中の赤ちゃんに「ベビーネーム」というのをつける。うちの夫婦ではお腹の中の赤ちゃんを「カメキチ」と呼んでいた。お腹の中で動く胎児に「カメキチ」と声をかけ続けること10カ月。その間には12年間ともに暮らした猫のカルヲが亡くなるという悲しい出来事もあった。カルヲ不在のTSUKA家で、ボニータのお腹の中に存在する生命体カメキチはカルヲの跡を継ぐアイドル的存在になっていったのだ。カメキチはボニータがごはんを食べている時に動きまくったりする、ちょこっとKYなところがあったり、頻繁にしゃっくりをしたりと、それなりのキャラを確立していった。人間の子どもというより、お腹の中の生命体として…。それが、実際に人の形をしたものとして生まれる日が近づくにつれて、なんか「出産=カメキチとのサヨナラ」のような気がしてきたのだ。俺様、ボニータが大きなお腹で台所に立ったり、リビングでカメキチに語りかけたりする姿がとてもいとおしかった。そんなシーンとももうお別れなんだなぁと思うと、少し寂しかった。
 そして、とうとうカメキチは出てきた!当然、人間の形をしている。「こんにちは赤ちゃん」という歌があるが、まさに初対面のような気持ちだ。もう、カメキチの姿はしていない。親の自覚だとか感動とか以前に、すごく不思議な気持ちでいっぱいになった。そのせいか、「ポルトちゃん」と名前をつけるのに、ほぼ5日悩み抜いた。
 ボニータが退院し、家に帰ってきた。カメキチの存在はなく、かわりにポルトちゃんがいる。今となってはボニータの妊娠中の思い出は良いものばかりになり、カメキチ不在が少し寂しい。でも、ポルトちゃんがほぼ1日に1回しゃっくりをするのを見ると、ポルトちゃんの中にカメキチの面影を見る。そりゃ当然、同一人物なんやからね。いずれにしてもわが家では新婚夫婦という生活は終わり、3人家族としての生活が始まった。だからといって特別なことをするつもりはないし、できもしないが、これからもっと人生が楽しくなるような気がする。
 ともあれ俺様はいつでも元気です。

※このエントリーは過去ブログからの改訂のうえ、転載したものです。過去のエントリーも順次このブログに移植していく予定ですが、しばらくお待ちください。
posted by TSUKA at 00:00| Comment(0) | よもやま話
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